夏の嵐と笑わない向日葵
「海を渡って、広い世界を見てみたい」
「向日葵……なら俺は、ずっと待ってる。向日葵が、東京に来んのをさ」
だから、今日の別れが、たとえ長い別れだったとしても、あたし達はまた会える。
「それでも、向日葵が泣いてる時、辛い時は……」
フワリッ
嵐君の手からホースが落ち、地面に水溜まりを作っていく。あたしは、嵐君に強く抱き締められていた。
「必ず、必ず迎えに来る。それまで待ってろ」
「え……」
「泣くなら、俺がいる時だけにしろ、1人で泣くな、強がるな」
抱き締められる腕が、少し震えていた。
どんなに心が繋がっていても、ううん。繋がっているから、あたし達はこんなにも別れが辛い。
少しずつ滲む涙に、あたしは流れないよう目に力をいれた。
そして、一生懸命、笑顔を浮かべる。
「約束する……嵐君に会える時まで、涙はとっとくから」
「ははっ、そーしてくれ」
嵐君は笑いながらも、少し泣いているように思えた。そして2人、いつかのように、額を重ねる。