夏の嵐と笑わない向日葵
「東京に行くのは、嵐君がいるから?」
「それもあるけど、あたしが…もっと広い世界を見たいって思ったからかな」
だから、手始めに嵐君が生きている世界を見にいこうと思う。嵐君が、夢に溢れているって行った世界を。
あたしは、窓から見える青空を見つめる。
嵐君は、この空の下、今日もたくさんの人を笑顔にしてるに違いない。
そんな嵐君を思い浮かべると、自然と笑みが溢れるのだ。
「加島が、そんな風に笑えるようになったのが、嵐君のおかげっていうのが、悔しいな」
「え……?」
青空を見ていたせいで、勝俣君の声を聞き逃した。
聞き返そうとした時には、勝俣君は立ち上がっており、それを呆然と見送る。
「幸せに、加島」
そう言って自分の席に戻っていく勝俣君になんて言葉をかけていいのか分からず、その背中を見送った。