夏の嵐と笑わない向日葵
嵐君は、あたしの心の整理がつくのはもっと後だと思っていただろうから。
あたしはポケットから、ハンカチにくるまれた向日葵の種を見つめる。
おばあちゃん……。
ここを離れても、あたしはおばあちゃんや、お母さん、お父さんが大切に守ってきたあの家や向日葵畑が好き。
残して行く事に、ずっと躊躇っていたけれど、あたしは、今どうしても傍にいたい人と、やりたい夢の為にここを旅立ちます。
「嵐君の言った通りだ……」
今度は、進行方向を見る。
強い潮風が、飛沫を上げながら進む船や汽笛、そして、とまこまでも広い海が、心を踊らせる。
「冒険に出たみたいだ」
きっと、この船の向かう先には、夢に溢れている。
悔やんでばかりの毎日に、泣いてばかりの弱虫なあたしだったけど、やっと前に進めた気がする。
ガサゴソッ
すると、ゲージが音を立てて揺れる。
あたしは、ゲージを開けて、ノラを抱き上げた。
「ノラ、これから嵐君に会いに行くよ」
「ニャー!」
いつもより元気な声で鳴くノラに笑みが溢れた。
2人で青い海と晴天の空を見つめながら、あたし達は旅を楽しんだ。