夏の嵐と笑わない向日葵
「おー、すげぇ殺し文句。今日は絶対帰らせねーから、責任とれよ?」
「え、ええ?」
嵐君の余裕の無い、赤い顔を見上げて、やっぱりあたしは嵐君が愛しくてたまらなくなる。
「でもまずは、スマホ買いに行くぞ」
「え、必要?」
文通でも、そんなに困らない気がするのに。
今まで、そんな不自由した事なかったんだけどな。
「あんなぁ、田舎と違って東京は物騒なんだ。それに、向日葵といつでも繋がっててーの!わかったか?」
「は、はい……分かりました」
ものすごい剣幕にあたしは目を見開いて驚いた。だけど、理由は全てあたしの為だった。
「そんな高度な文明機器、使いこなせるかな」
あたし、本当に生まれてこのかた、持ったことないんだけど…。
ひとしきり笑い、あたし達は見つめ合う。
「これからは、ずっと傍にいてやれる。向日葵は……俺がずっと守ってやるから」
「もう……ずっと……嵐はあたしを守ってくれてた。こんなあたしで良ければ…一緒に生きてください」
もう、誰かと生きていくなんて事無いと思った。
自分の存在が誰かを不幸にすると思ったら、人に近づくのが怖かったんだ。
でも、本当は……。
誰よりも、人に触れたくて、孤独でいるのが怖かった。