夏の嵐と笑わない向日葵


「っ……うん!」


ポロリとこぼれ落ちた涙を、嵐は親指で拭った。



「今は俺がいる。たから、いくらでも泣いていーぞ」


前に、1人で泣くなって言われたのを思い出す。
悲しくてじゃない、嬉しくて涙が流れるんだ。


後ろばかり振り返って、悲しみに溺れていたあたし。
笑いかたさえ忘れていたあたしに、心を取り戻してくれた人。


拝啓、おばあちゃん。


おばあちゃんが繋げてくれた運命の糸は、あたしを驚くくらいに変えてくれました。


あの時、あたしはボロボロで、きっと生きているようで生きていなかった。


「ありがとう」って、伝えられなくてごめんね。
笑顔を見せられなくてごめんね。


でも、この空が……。
おばあちゃんのいる天国に繋がっているのなら。


どうか見て。
あたしはこんなにも……。


「向日葵、行こーぜ」


嵐はあたしの荷物を片手に、あたしに手を差し出す。あたしは、1歩を踏み出し、その手をとった。


「うんっ!」


笑顔を浮かべて、嵐の温かい手を強く握り返す。この手は、もうずっと離れない。



こんなにも、自然と笑顔が溢れるほどに、幸せです。






  
End
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