夏の嵐と笑わない向日葵
そうだ、嵐君と話してた時だ。
一緒にご飯を食べていた時、泣いてしまったあたしに言った嵐君の言葉…。
『こんな、悲しそうな顔ばっかじゃ、ダメだ。向日葵は笑顔が似合うんだからよ!』
そう、あたしには笑顔が似合うって、そう言ったんだ。
「嵐君……?」
あたしは目を開けて、あたしの髪をすく嵐君を見つめた。
すると、嵐君は驚いたように目を見開く。
「どわぁぁーっ!?お、起きてたのかよ!?」
慌てて飛び退く嵐君を、無言でじぃぃっと見つめる。
まるで、あたしが何かしたみたいな反応じゃないか。
驚きたいのは、あたしの方だ。
「……………」
「おい!な、何か言え!!」
「……どうして?」
そんな、強要されても話す事なんてない。
話したいなら、嵐君が勝手に話したらいいのに。
「どうしてって……反応に困るからだ!」
「ふぅん……」
そんな慌てる嵐君をまたもや無視して、縁側から見える月に視線を向けた。
「ふぅんって、お前な…」
困ったような嵐君の声に、あたしはふと考える。
嵐君とは、今日出会ったばっかりなのに、全然緊張もしないし、良い意味で空気のような人だな…。
こんな風に、誰かといる事に苦痛を感じないのは初めてかもしれない。