夏の嵐と笑わない向日葵
「向日葵ー!!」
グイッ
「っ!?」
嵐君はあたしを海へと引きずり込む。
その勢いで、あたしは声になら無い悲鳴を上げて、盛大に海の中で転んだ。
バッシャーーン!!
「ぷはっ……」
「ぶ!!向日葵、すげーびしょ濡れ!!」
三つ編みにまとめた髪も、ワンピースも濡れて重い。
転ばせたのは嵐君だっていうのに、笑うなんて…。
それはなんかズルい。
グイッ
「うおっ!?」
あたしは両手で嵐君の腕を掴み、体重をかけて引っ張った。すると、不意うちだったせいか、嵐君は思惑通りに転けてくれた。
やった……。
心の中で密かにガッツポーズをする。
「ぶはっ!!死ぬかと思ったぜ……」
そんな大げさな……。
濡れた前髪を掻き上げながら、嵐君はニカッと楽しそうに笑った。
「あ……」
「お?どうした、向日葵」
小さく声を上げたあたしを、嵐君は不思議そうに見つめる。
あたしが見ていたのは、嵐君の金髪。
昨日は、月のような金色だと思ってたけど、今は…。
太陽みたいにキラキラ反射してて、すごく…。
「綺麗……」
まるで太陽を見上げるかのように、あたしは嵐君の金髪をじっと見つめた。