夏の嵐と笑わない向日葵


「向日葵は、自己評価低すぎ」

「こんなあたしの、どこを好きになれっていうの…」


そんな事言われたって、あたしはあたしの良いところが分からない。


「向日葵は気づいてねーだけ。俺はもう何個か見つけてるぞ」


まるで自慢げに言いきる嵐君に、あたしは首を傾げる。


「会ったの、昨日なのに」


過ごした時間なんてたかが知れてる。
そんな短時間で、あたしの何がわかるの??


「美人だし、声が綺麗だろ、それに…優しいとこだな」

「あたし…あなたに優しくしたっけ」


どうしよう、覚えがないんたけどな。
むしろ、冷たく当たったような……。


2人海に浸かりながら見つめ合う。
嵐君の方が身長が高いから、必然とあたしが見上げることになる。


「熱中症になった時、看病してくれたろ」

「あれは……だって、そのままにしておけないし」


いくら知らない男の子だったとしても、そこまで冷たい人間ではないと……思う。



「何より……俺は向日葵の笑顔が好きなんだよ」

「……え…がお?」

 
あたし、嵐君の前で笑った事あった?
ううん、あたし……今まで笑った事あったっけ??


「あたし……嵐君の前で笑った事無い」


だって、お母さんやお父さん、おばあちゃんが亡くなってから、ずっと1人でいたんだ。


笑いかたも、怒るとか、そんな感情さえも忘れちゃった。














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