夏の嵐と笑わない向日葵
「日が暮れるのって、早ぇーよなー」
あたしの隣で、砂浜に横になる嵐君がそう呟く。
あたしは砂浜に体育座りをしながら、茜空を見上げた。
確かに、時間は止まらないから…。
それに、人は空が赤く染まり、月が満ち欠けするのにさえ気づかないくらいに忙しい生き物だから、きっとそんな小さな変化に気づかないのだと思う。
「あたしは……逆だった…」
「逆って?」
嵐君は空からあたしへと視線を向ける。
あたしは空を見つめたままそう答えた。
そう、あたしは逆。
お母さんやお父さん、おばあちゃんが亡くなってからというもの、現実を直視できなくて…。
「毎日、何も考えずに過ごしてきたから……」
忙しいなんて感じなかった。
そう、ただ時間が、時間だけが過ぎていくような感覚。
学校でも、テストが、受験が忙しいとか、そんな風に、何かに追われているような感覚も無かった。
「雲が流れて、日が暮れるまで、月が満ちて、欠けるまでが、長く感じた…」
そして、その度に気づかされる。
あたしは、1人なんだって……。