夏の嵐と笑わない向日葵
昔、こんな風に風邪をひいた事があった。
あれは確か、お母さんやお父さんが亡くなった後の話。
「向日葵、風邪ひいちょっとね」
「風邪……」
どうりで、体が怠いと思った。
でも、風邪をひこうと、病気になろうと、あたしはどうでも良かったんだ。
「顔も赤い、可哀想になぁ」
おばあちゃんはそう言って、布団に横になるあたしの額に触れる。
冷たくて気持ちいい。
熱を奪っていくように、スゥーッと体が軽くなった。
「ほんに、辛いときは辛いって言ってええんよ」
「………平…気」
本当は、平気じゃないくらいに頭が痛くて、体も怠くて、泣きそうだった。
でも、もしこのまま死ねたなら、あたしは大好きなお母さんやお父さんの所へと行けるんだって、そう思ってた。
「向日葵……ばあちゃんは、向日葵が好きなんよ、そんな向日葵がいなくなったら…悲しいんや」
「っ……」
おばあちゃんはそう言って、あたしを抱き締めた。
まるで、あたしが何を考えているのか、見透かしたかのような言葉だった。
あたしだって、おばあちゃんがいなくなったら悲しい。
なのに、おばあちゃんはあたしを置いていってしまった…。
それが悲しくて、あたしは泣いてしまった。
お母さんとお父さんが亡くなってから、初めて泣いた日だった。