夏の嵐と笑わない向日葵
「泣いてる…のか?」
「ん……?」
誰かに頬を触られる感覚に、目を覚ます。
すると、いつの間に帰ってきたのか、嵐君がいた。
いつの間にか暮れている空に、あたしが長い時間寝てしまった事に気づく。
「怖い夢でも見たか?」
心配そうにあたしを見つめる嵐君に、あたしはフルフルと首を横に振った。
「……熱、少し下がってきたみたいだぞ」
すると、嵐君は何か言いたげだったが、それ以上は聞かないでいてくれた。
嵐君はあたしの額に触れる。
冷たくて気持ちいい……。
まるで、あの時のおばあちゃんの手と同じ…。
「嵐君の手……」
「俺の手、がどうかしたか?」
「魔法……の手…みたい…」
おばあちゃんの手も、あたしが悲しくて寂しい時は温かくなって、熱くて苦しい時は冷たい。
「優しい……手…」
「向日葵……お前……」
あの手を思い出して、あたしはまた泣いてしまった。
だって、もう2度と触れられない。