夏の嵐と笑わない向日葵
「あのな、泣くくらい辛いときは、弱音吐け」
「!!」
『ほんに、辛いときは辛いって言ってええんよ』
あぁ、なんで……。
どうして、あの時と同じ言葉を……。
止まらず流れる涙を、嵐君は何度も拭ってくれた。
「向日葵は、ずっとそうやって生きてきたんだな」
切なそうにあたしを見つめる嵐君と目が合う。
「どうして……嵐君が辛そうなの」
「そんなの、あたりめーだろ」
何が当たり前なのかわからない。
あたしには、嵐君のあたりまえなんて知らない。
「向日葵が、悲しそうだからだよ」
「……あたし…?」
本気で分からない。
あたしが悲しいと、嵐君は悲しいんだって。
「どうし……」
「どうしてなんて聞くなよ?あとそれから!俺は、誰にでもそうなるわけじゃねー」
あたしの言葉を遮って、まくしたてるように言う嵐君を、呆然と見つめる。
あまりの勢いに、驚いてしまったのだ。
「向日葵、お前が辛そうにしてんのが、俺も辛いんだよ」
「うん……」
とりあえず、そういう事らしい。
嵐君はあたしが辛いと悲しいんだって事だよね。
その理由は、教えてはくれないけれど…。