夏の嵐と笑わない向日葵
「ニャー」
二人て話していると、いつの間にか傍に、ノラが来ていた。
ノラは私の頬にすり寄ってくる。
今日は、顔も見てなかったから…。
あたしを心配してか、寂しくてなのか、甘えてくる。
「向日葵、朝からなんも食ってねーだろ、お粥作ってみたんだ、ほら…」
嵐君は後ろに置いてあるお盆の上の鍋から、お粥をよそう。
そして、体を起こすあたしに手渡した。
「卵粥……」
湯気が、なお食欲をそそる。
それに、嵐君の見た目からは想像できないくらいに上手い。
チャラ男と卵粥……。
「似合わない」
「う、うるせー!」
嵐君と卵粥を見て呟くあたしに、嵐君は照れはじめた。
そんな嵐君に、あたしは頭を下げる。
「ありがとう…」
「っ!!」
本当に、こんな風に誰かに優しくされたのは、久し振りだった。
パクりと一口お粥を口にすると、また泣きそうになる。
だから、あたしは俯いたまま、お粥をもくもくと食べた。
「そんなん、向日葵の為ならいくらでも作ってやるし」
「っ……」
ポタポタと涙がお粥に落ちる。
嵐君の言葉の一つ一つが、あたしにとっては優しすぎて、嬉しかった。
「すごく……おいしい」
「っ!!そ、そうかよ!!あったりめーだろ!」
そう言いながら、嬉しそうに笑う嵐君を、あたしは不思議な気持ちで見つめた。
嵐君は、あたしの枯れた心に水をくれて、どんどん潤わせていく。
今日知ったのは、人に優しくされる温かさ。
他の誰かじゃなくて、あたしにだけ向けられた優しさ。
それは、あたしという存在を認めてくれたような気がして、心が満たされていくような感じがしたんだ。