夏の嵐と笑わない向日葵
「ニャー」
「ん………?」
頬に触れるフサフサとした感触にあたしは目を開ける。
すると、ノラがあたしの頬にすり寄っていた。
「ノラ、おはよう」
壁にかかる時計振り子時計を見ると、時間は午前6時30分。
まだ、そんな時間なんだ……。
早めに起きて朝食作ろう、ノラも待てなさそうだし。
あたしは着替えをすまして、台所へと向かう。
そして、エプロンをつけた。
嵐君が家へ来て、1週間が経った。
嵐君が来てからというもの、あたしの心はさざ波が立っている。
何も話さない、何も考えないで過ごしてきたこの数年間が、ガラッと変わった。
嵐君は数秒単位であたしに話しかけてくる。
正直、最初は鬱陶しかったけど、今は、それが当たり前になってきた。
ジューッ、トントントンッ
鮭を焼きながら、同時に味噌汁を作る。
お浸し用のほうれん草を切りながら、あたしは今日見た夢の事を思い出していた。
向日葵の名前の由来。
お母さんやお父さん、そしておばあちゃんが大切にしていたモノからとられた名前。
それは嬉しいのに、どうして皆いなくなってしまったんだろう。そんなモノだけ残されたって、嬉しくないよ…。