夏の嵐と笑わない向日葵


「ずっと大切にしてきたんだ、それを…自分で壊すな。もう、傷つかなくて良い」


そう言って、嵐君は茎を折ろうとするあたしの指を、一つ一つほどいていく。


「あたし……全部壊れちゃえばいいなんて、本当は思ってない。本当は……悲しかっただけ…」



ほどいた指に、嵐君の指が絡まる。
そして、泣いてしまうあたしの頭を引き寄せて、抱き締めてくれた。



「あったかい……。人って、こんなにあったかいんだね」


長いこと、誰にも触れなかったせいで、あたしは忘れてたのかもしれない。


人の温もりを…。


「少しずつ知ってこうな。俺が、忘れたもん全部取り戻してやるから…」

「ありがとう…ありがとう、嵐君…」


泣きじゃくるあたしを、嵐君はずっと抱き締めてくれた。


一人ぼっちだったあたしに、嵐君を引き合わせてくれたのは、いつもあたしを大切にしてくれたおばあちゃんのように思えた。


今はまだ、すぐに前を向くなんてできないけど、少しずつ、変わっていけたらいいなと、そう思えた。














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