夏の嵐と笑わない向日葵
「落ち着いたか?」
「うん」
しばらく抱き合っていると、あたしの心はいつの間にか平穏を取り戻していた。
安心させるように頷くと、嵐君は「よし!」と勢いよく立ち上がる。
「この向日葵、まだ何とかなるかもしんねーし、やれる事やろうぜ!」
「嵐君……」
先に立ち上がった嵐君は、あたしの手を引いて立ち上がらせる。
「向日葵、一緒にやろーぜ!な?」
「うん!」
こうしてあたしと嵐君は土に汚れるのも気にせずに、その一本の向日葵を助けようと頑張った。
棒を使い、向日葵の姿勢を整えてあげる。
そして、肥料を多目にまいた。
「今日の夢の話……」
あたしは、土を手で整えながら、嵐君に話し出す。
「朝、話してたやつか?」
嵐君は土を整える手を止めて、あたしを見た。
「うん。あたし、8月生まれだから…あたしが生まれる時期に、ここに来たお母さんが、向日葵ってつけたの。意味は…さっき話したとおり」
8月の暑い日、お母さんはあたしに向日葵のように上を向いて生きていってほしいと願いを託してあたしを生んだ。
「あたし…向日葵みたいに強く生きられないって、引け目を感じてた。だけど、嵐君のおかげで……」
嵐君の言葉が、あたしに向日葵の花が好きだった事を思い出させてくれた。