夏の嵐と笑わない向日葵
⑤雨とノラ
ザーッ……。
うるさいくらいの雨音。
濡れる度に冷える体。
濡れた段ボールから聞こえる小さな鳴き声。
「これは……」
「ニャア……」
段ボールから現れたのは、小さな三毛猫。
弱々しく鳴いて、あたしを見上げている寂しげな瞳。
「あなたは……捨てられたの?」
聞くまでもないけど、たぶんこの子は捨てられた。
「あたしと来ても、君が不幸になるよ」
あたしは立ち上がり、そこから離れようとする。
「ニャア……」
でも、その声を聞いたら、足が地面に縫い付けられたかのように動かなかった。
振り返るると、段ボールから顔を出して、あたしを見つめている。
「だって、あたし気味悪いって…」
「ニャア……」
猫は段ボールを出て、あたしの足元へとすり寄ってくる。
雨はあたしも猫もお構いなしにびしょ濡れにした。