夏の嵐と笑わない向日葵
パシャッ、パシャッ
ふと、雨音に混じって、足音が聞こえた気がした。
「向日葵、ただいま!!」
そして、門から、嵐君が駆け込んでくる。
笑みを浮かべる嵐君は、泥だらけだった。
どれくらい待っただろう。
数時間なはずなのに、何年も会っていないかのような気さえする。
「こいつ、近くの草むらんとこにいたわ。つるとかに絡まって、動けなくなってた」
そう言って嵐君が抱き抱えているのは、嵐君同様、泥だらけになったノラだった。
「嵐君、ノラ……」
あたしは、そこから動けず、こちらに歩いてくる2人をただ見つめる。
嘘、これは夢じゃないよね。
2人は、ちゃんとここにいる。
だとしたら、あたしはっ……。
「遅くなっちまってごめんな、本当、見つかってよか…」
「っ!!」
ガバッ!!
あたしは、たまらず雨の中に飛び込んで、ノラを抱き抱える嵐君に抱きついた。