夏の嵐と笑わない向日葵
「向日葵っ……!?」
抱きつくあたしに、嵐君は慌て始める。
それも無視して、あたしは嵐君から離れなかった。
「ありがとうっ…それで、おかえりなさいっ…」
ポタポタと流れる涙と雨が、溶け合う。
顔を上げて、あたしは嵐君を見上げる。
「っ…向日葵……?」
驚いている嵐君の頬に手を伸ばして、跳ねた泥を手でゴシゴシと拭った。
「なっ……」
「こんなに汚れて……」
あたしの大切な人の為に、ここまでしてくれた。
本当に、本当に優しい人。
「ありがとう、本当にありがとうっ…」
泣き笑いで嵐君を見つめると、嵐君は嬉しそうに笑った。
「向日葵の、その顔が見たくてした事だ。ほら、ノラに話したい事があんだろ」
「ノラ……」
嵐君の腕の中で黙っているノラを見つめる。
「ねぇノラ……」
ノラに、ずっとここにいてって言うことが…怖い。
でも、考えてもしょうがない、ダメな時は、その時考えればいいんだって、嵐君が教えてくれた。