夏の嵐と笑わない向日葵
⑥夏の空に上がる花
月は変わり、8月。
それはすごい猛暑で、向日葵畑で水やりをしながら、額の汗を手で拭った。
「やべー、俺たち、溶けて死ぬんじゃね?」
嵐君はシャツをつかんでパタパタと仰いでいる。
それでも引かない汗が、首筋を伝って流れていった。
いつの間にか、嵐君はあたしの日課である向日葵畑の水やりについてきて手伝っている。
広いから、助かるんだけど…どうして嵐君がそこまでしてくれるのか、本当に分からない。
「それだと、何だかアイスみたい」
「アイス…アイス食いてーな!!」
さっきまで怠そうにしていた嵐君は、急に元気を取り戻す。
なんというか、嵐君は欲求に忠実だ。
お腹空いたら食べる!
寝たいときに寝る!
遊びたいときに遊ぶ!という具合に。
「一通り水やりも終わったしさ、アイス買いにいかね?」
嵐君はあたしの被る麦わら帽子を少し持ち上げて、顔をのぞき込んでくる。
ドキンッ…。
「え……」
あれ、胸がおかしい。
なんだか、いつもより早く動いてる気がする。