夏の嵐と笑わない向日葵
嵐君の顔を見ただけで、どうしてあたし、こんなに動悸がするんだろう。
「なー、向日葵ー?」
待ちきれない、駄々をこねる子供のように催促する嵐君を、あたしはボーッと見つめた。
嵐君、睫毛長い…。
こんな風に近づく事は何度もあった。
なのに、今さらそれに気づくなんて…。
「向日葵……まさか、俺にみとれたかー?」
ニヤニヤしだす嵐君に、あたしはハッと我に返る。
「って、今の台詞……俺ってばカッコイイー!」
「……馬鹿?」
照れ隠しにあたしはガバッと麦わら帽子を深くかぶり直した。それで嵐君の視線から逃れる為だ。
「冗談だって、ほら、行こーぜ」
「うん…」
嵐君はあたしの腕を引いて、歩きだす。
嵐君はよく、こうやってあたしの腕を引くのが癖になってる。