夏の嵐と笑わない向日葵


「ノラ、おやすみ」

「ニャー」


夜になり、あたしは電気を消した。



あたしの布団に一緒に入るノラに声をかける。
横になると、チャリと首からかけたネックレスの金具が鳴った。


その視線の先にあるのは、二つのシルバーリングだ。


「お母さん、お父さん……」


これは、お母さんとお父さんの結婚指輪だ。


交通事故で亡くなって、こうして形見としてあたしの所へと帰ってきた。



そう、おばあちゃんが残した向日葵のように、大切な人達はあたしの前から消えていく。



「あたしは……一人」


ボーッとリングを見つめながらそう呟く。



すると、モゾモゾとノラがあたしの顔の近くまでやってきて、頬を舐めてきた。


「ノラ、ありがとう」

「ニャー」


ノラ、あたしの事を慰めてくれてる。


心が泣いている時、誰よりも傍で寄り添ってくれるのは、この子だけだった。








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