(短編集)ベッドサイドストーリー・2


 そこまで自分で想像してバタバタしていた。

「うわーうわーうわー!」

 僕はどうしてしまったんだ。そう言う声も弾んでいた。

 そして翌日。僕はいつもの階段を軽快に上がっていく。今日は先にいって、あの人がくるのを待ってようと思ったのだ。自分から挨拶をして、あの人がくれる笑顔が見たいって。

 だけど、あの人は来なかった。

 その朝、僕は電車を2本見送って待っていたけど。

 いつもの僕が乗る電車の同じ車両のメンバーが、不思議そうな顔をして窓の中から僕をみていた。え、乗らないの?そんな表情だった。僕は困りきって一人でホームに突っ立つ。だってあの人が来なかったから。だから僕は、会社にも遅れてしまった。

 
 あの人は、それからもプラットホームに姿を見せなかった。

 僕が使うこの駅は乗換駅でもあったから、彼女は他の沿線から乗り換えていたのかもしれない。まだそんなことを知る前に、あの人には会えなくなってしまったのだ。

 使う時間を早くしたのかな、そう思って、色々時間帯を変えてみたりもした。1本早くしたり、1本遅くしたり。椅子に座れるようにって早めることはあるだろうし、勤務時間が変わったのかもしれないと思って。

 諦めたくなかった。ようやく話せた次の日に、会えなくなるなんて。

 そんな、無情な。

 僕はしばらくの間大いに足掻いてみせて、それから1ヶ月が経った頃、仕方なく、沈んでいく気持ちを受け入れた。


 ・・・あの人には、もう会えないんだ。



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