(短編集)ベッドサイドストーリー・2


 私は毎週土曜日にここへ買い物にくる。

 会社帰りに都会からバスに乗る前、お洒落な雑貨や種類豊富な冷凍食品は買って帰るので、休日にここで買うのは日用品やちょっとしたお菓子、お酒や野菜などだ。店のおばあちゃんには「土曜日のあの人」と思われているようで、顔を出すと今週もようこそって声をかけてくださる。

 本当にのんびりとした、田舎のひと時。その時間がとても好きだった。

 昔ながらの大きな平屋、その玄関先で店を開いている。土間の中は薄暗く、こんな雨の日は外からではほとんど何も見えない。だけど今日は私以外にお客さんがいるみたいだ。店の外に立てかけられた2,3本の傘を目にして、そう思った。

 私は自分の水色のビニール傘を店の前に置いて、こんにちはと言いながら店に入る。今日もゆっくりと買い物を始めた。

「雨、よく降るねえ。だけどあなたはいつも楽しそうね」

 おばあちゃんがそういうから、私は缶詰の棚を物色しながら声を出して笑う。

「雨は好きですよ。平日だとやっぱり鬱陶しいこともあるけど、休みの日はね。足が汚れていてすみません」

 私の泥だらけのサンダルは店の床を汚している。だけどおばあちゃんは、気にしなさんな、と手をふった。

「土間だし、水洗いしてるから大丈夫よ。でも風邪に気をつけてね。足許は冷やすと大変なんだから」

「はあい」

 素直な気持ちで頷いた。


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