(短編集)ベッドサイドストーリー・2
採れたてだというナスとトマト、それからとうもろこしとチョコレートを買って、私はありがとうとお店を出る。
雨はまだ降っていたけれど、かなり小雨になっていた。
ちょっとブルーがかった透明な傘。私はそれを、店の前にたてかけてあった傘の中からひょいと取り出して、ゆっくりと頭の上に開いて歩き出す。
手に入れたばかりの野菜で今晩は、スープを作ろう。野菜たっぷりの温かいスープ。パンとサラダで素敵な夕食に変身する。そうだ、確か、ワインもあったはず。そんなことを考えていたら、後ろから声をかけられた。
「ちょっと・・・!すみません!」
「え?」
自分のことだと思ってなかった。だけど私の前に歩いている人はおらず、森ばかり。ってことは私?くるりと振り返ると、手に傘を持って走ってくる男の人が。
コンクリート舗装されていない道を、足許が汚れるのも気にせずに真っ直ぐこちらへ向かってくる。泥がはねて彼のズボンに振りかかっていた。
何だろう、私はそう思って男性を見詰める。こんな風に声を掛けられることなど、ここら辺では今までなかった。
何かの勧誘?そう思って身構えたところに、追いついて息をつく男の人が、困ったように笑って言った。
「すみません、傘、間違えてませんか?」
「え?」
傘?そんなことを言われると思ってなくて、私は面食らう。慌てて自分がさしている傘を見たけれど、私が持ってきて使っているいつものビニール傘に見えた。・・・と、柄の先にある赤いシールに気がつく。