(短編集)ベッドサイドストーリー・2
「あ」
「赤いシールがあったら・・・それ、僕のです」
どうやら本当に間違えていたらしい。店先に立てかけてあった傘の内、似た様なブルーのビニール傘が二本もあったとは!
私は慌てて自分がさしている傘を男性の方へと差し出した。
「すみません!気がつかなくて・・・」
彼は自分が持ってきたブルーのビニール傘を開いて差し出しながら言った。
「いえ、仕方ないですよ。ビニール傘だし」
そう、ビニール傘なのだ。私はお礼をいいつつ自分の傘を受け取ってそう思った。柄が描いてあったりブランドものである傘ではない。そんなのだったら私も間違えなかっただろう。どこにでもあるビニール傘、だけどちょっと珍しいブルーのビニール。だから深く見もせずに手に取ったのだろう。
二人とも買い物袋を手から提げていたために、傘の交換にちょっと手間取った。
何となく苦笑して、顔を見合わせる。
男の人は私と同じ年くらいか、ちょっと若いように思えた。黒髪は前髪をおろしてあって、シンプルなポロシャツとジーンズという格好。左目の下に泣き黒子があって、それが彼の印象を優しくしている。ざっとみただけで、私と同じような独身社会人かなと見当がついた。同じような休日に、同じように買い物に出たのだろう、って。
「自分のだって判るように・・・シールをはってらっしゃったんですか?」
興味を持って聞いてみた。