(短編集)ベッドサイドストーリー・2
このままだったら10時を過ぎてしまう。勿論終電には余裕で間に合うけど、でももうスーパーもあいてないしな・・・。晩ご飯のことを考えて面倒くさくなってしまった。
お腹はすいているけれども、食事をとる、という行為にいきつくまでがえらく面倒くさいじゃないの!ああ・・・出前でも頼みたい。今ここに何か美味しい食べ物をもって来てくれる人がいたら、それだけで惚れてしまうかも・・・。
「いやいや、ないでしょ」
一人で苦笑した。
自分があまり男性に惚れないタイプなのは重々自覚している。きっと恋愛カテゴリーの優先順位が低いのだろうって分析していた。一人でも平気なことが多かったし、気楽だった。
この歳まで仕事を頑張ってきたのは、それが楽しかったからだ。おかげで女性にしたら高い社会的地位を手に入れることも出来ている。だけど、34歳の女性という意味での私生活の潤いというのは、ほとんど砂漠化している状態なのだった。
右左どっちをむいても、一人。咳をしようが面白いテレビをみて笑おうが一人。
賃貸の小さな家は帰って寝るだけ。
ペットも飼ってないし、同居人もいないから、部屋に帰って明りをつけるのも私の役目。
残業が禁止されてからはあまりまくった夜の時間をなんとかしようとジムにいってみたりしたけれど、いまいち熱中できなくてそれもやめてしまった。会社を離れてまで愛想笑いをするのが嫌だったのだ。時間はある。だけど友人は皆結婚して子供がいるから飲みに付き合わせることなど出来ないし、部下だって家庭もちばかりだ。それだったら家で一人でぼけっとしている方がマシ。だから仕事から帰ったら、お酒を片手にDVDを観る日々なのだった。