(短編集)ベッドサイドストーリー・2
ぼうっと見詰めるだけの私に向かって、薄明かりの中、気恥ずかしそうに口元を歪めて彼は言う。
「俺の声だけでも、気に入ってくれたなら。・・・たくさん話すようにしますから。他のところにも興味を持ってくれませんか」
心地よい声が耳の中で反響する。
それは私の心臓へむかって、真っ直ぐ落ちていくようだった。
夜の10時過ぎ、電気の消えた会社のエレベーターホールで。
床に座ったまま、私は頷いた。
この手の平の中に、今。
恋の欠片が落ちてきた―――――――――
「10:00P.M.」おわり。