(短編集)ベッドサイドストーリー・2
・ミッドナイトコール


・ミッドナイトコール


 突然の電話だったけど、わけを聞かないでくれてありがとう。今晩は‘戦友’の声を聞いてから眠りたかったの。


 何か心の中がざわざわしてね、いても立ってもいられなくなることってあるでしょう?自分の部屋がどこか知らない場所みたいに思えて、足許がぐらぐら揺れだして。

 あたし、不安だったのね、多分。

 気がついたら電話をとって、あなたにかけてしまっていた。

 ごめんなさい、もし眠ろうとしていたなら言ってね。大丈夫?ああ、良かった。ありがとう。

 ねえそっちの空も晴れている?月が細く細くなって、雲にかろうじて引っかかっているように見える。あれって何て言うんだっけ?下弦の月?それとも上弦の月?

 綺麗だけど、それってきっとあの儚さがあるからよね。だって今にも折れそうだもの。齧ってみたい?あははは、そんな、ダメよ、細すぎて口の中が切れちゃうかもよ。どんな味がするのかしらね・・・金平糖みたいな、あんな感じだったら嬉しいかも。ちょっと甘くてカリカリして。金平糖ってね、シャンパンにいれてみると美味しいんだって。それに可愛いよね。シュワシュワの金色の液体の中に、ころころの金平糖が入っていたら、確かに。ちょっと甘くなるんだろうし。一度ね、テレビでそんなことを言っていたの。フランス人に日本のお菓子を紹介するとかなんとかで。

 好きだった、金平糖?かりん糖の方がいい?ふふ、男の子ってそうかもね。


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