(短編集)ベッドサイドストーリー・2
じゃあ、ね。
そう言って、電話を切った。
同じタイミングで涙が落ちる。あたしはそれをそのままにしてふき取りもせずに、ぼんやりと月を眺める。
細くて細くて、今にも雲に突き刺さりそうなあの月。キラキラと光って暗い夜の空に浮かんでいる。
彼は齧ってみたいって言っていた。
・・・そう、あたしも、齧ってみたい。
バリバリと噛み砕けば、この悲しみだってなくなってしまうだろう、そんな気がした。
涙がひとつぶ、ワイングラスに落ちて表面を揺らす。あたしはグラスを手に取って、涙のとけた赤い液体をぐぐっと飲み干した。
電話のわけを、聞かないでくれて、ありがとう。
聞かれてしまったら・・・言ってしまったかもしれない。
『あなたが好きです。だから、声が聞きたくて』。
・「ミッドナイトコール」終わり。