(短編集)ベッドサイドストーリー・2
思わず眉間に皺を寄せそうになってしまった。そういえば、私ったらまだ化粧水も塗りこんでない。うわー、ダメよ、このまま皺になるなんて!最近は彼のせいで、ずっと仏頂面なんだから!
突然立ち上がって洗面所へ飛んでいく私の背中に、唯子の声が追いかけてきた。
「話きいてくれるんじゃないのー!?」
「聞くわよ!だから話しなさいって言ってるのに!いいから先に結論を言ってー!」
棚から化粧水を取り出して手の平に出しながらそう叫んだ私の耳に、唯子の話す‘結論’が飛び込んできた。
「結婚相手が見付かったのー!」
鏡の中の私の両目と口が、ガッと開かれた。
何だってーっ!?
「一体どういうことよ!?」
私は洗面所から顔だけ突き出して、居間にむかって叫んだ。
だって唯子はただ今独身なはずなのだ。そんでもって、私が知っている限りでは付き合っている男もいないはず。そもそも元は同じ会社の同僚だったのが、バイヤーに憧れて会社を辞め、今は独立して自分の店をもつまでになった彼女に、誰かとの関係を構築している時間はなかったはずだ。店を軌道にのせるまでがあまりにも多忙で、その間私も何度も悩みにくれる彼女の自棄酒につきあったものだった。
だから、つい先月も飲みに行ったわけで――――――――
その時には男の話は欠片もなかったはず。
どっから男が出てきた!?