(短編集)ベッドサイドストーリー・2
後で考えたら信じられないくらい適当に化粧水を塗りたくり、私はダッシュで居間へと戻る。そして決して写真にとることなど出来ないような変顔で、彼女に噛み付いた。
「結論すぎるでしょ!!一体どこから男が出てきたのよ!?」
口角をにいーっと上げて、唯子が笑う。それはそれは嬉しそうな笑顔で、私は一瞬はっとしてしまったほどだった。
あのね、と唯子が話し出す。私も彼女の隣に改めて座り、話を聞いた。それによると、その相手の男とは出会ったのはつい2週間前ほどらしい。買い付けにいったロンドンのパブで、日本人会なるものが開かれると聞いて、大して興味はなかったけれど外国で知己でも出来ると嬉しいと思って参加してみたら、そこには日本の様々な場所からロンドンに来て様々なことをしている人が集まっていたらしい。
最初はとまどったけれど、ハーフパイントのエールビールを飲みながら談笑するうちに、唯子は楽しくなったそうだ。
色んな業界の話、ロンドンで苦労したこと、それからイギリスでの風習などについて、話題は事欠かずえらく盛り上がった。その中に、出身地が同じ男性がいたらしい。
「すごい偶然でしょ?だって私は地方出身で、それも決して大きな街じゃないのに。日本ではなくて外国だからこそ出会えたのかもしれないけど、とにかく興奮したのよ!」
彼女の興奮が私にも伝染し、知らないうちに両手を握り締めつつ聞いていた。
彼は4つ上の男の人で、証券会社に勤務している。そしてその場での会話や間の取り方などの相性がえらくよかったので、日本でも会いましょう、と連絡先を交換したらしい。