(短編集)ベッドサイドストーリー・2
・氷がとけるように
・氷がとけるように
かなり久しぶりに呼び出されたと思ったら、終電がなくなる時間をすぎても飲んでいた。
「もうさ、ここまで来たら、もうちょっと飲もうよ」
相模晃はそういって私のシャツをくいくいと引っ張る。いつもよりもかなりのハイテンションに酔っ払った赤い顔。私は繁華街の光あふれる夜空を見上げてから、ふう、とため息を零した。
「もう、しっかりしてよ。まだ飲んで体はもつの?」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
ちっとも安心できない返事だ。
だけど、眩しい光に照らされる顔は楽しそうな笑顔だった。ネクタイを緩めて大きな口をきゅっとあげて、私を覗きこんでいる。だから私は仕方ないな、と頷く。
「じゃあ、もう一軒だけ」
「やったー!」
だってさ、歩きながらそう言って、晃はくしゃっと笑う。
「タクシーだって拾えないよ。見て、おっさん達の行列が出来てるし。待ってる時間だけでもさ」
「・・・ま、確かに行列だよね」
そんなわけで、私達は昔からよくいっていたワインバーへと足をむけた。