(短編集)ベッドサイドストーリー・2
相模晃と、私、田村亜美は大学時代のバイト仲間だった。
お互いべつの大学生で、最寄駅前にある大きな本屋でのアルバイトで出会った男の子。愛嬌があってひょうきんで、皆をよく笑わせていた。
アルバイト仲間がころころと変わっていくなかで、4年間変わらずにそこで働いていたのは私達ふたりだけ。だから、よく一緒に飲みに行った。変わっていくアルバイトの子達の話とか、就職活動の話とか、うまくいかない親との関係だとか。だけど大学を卒業して就職し、新しい世界でうまくいかなかった時が一番よく会っていたかもしれない。
愚痴をはいてお酒を飲んで、そのままカラオケにもいってストレスを発散した。一緒に笑ってすっきりして帰る、そんなことを何度もしていた。
今年、24歳になる私達は、会社にもやっと慣れ、今では一年に2,3回あうくらいの仲だった。それも仲間と一緒のイベントのみ。二人だけで飲みにいくなんて、本当にいつぶりだろう。
ほんの、つい昨日、大学卒業で辞める前に同じ本屋でアルバイトをしていて仲良くなった女の子からの電話があったばかりだった。そして知ったのだ。晃は、数年付き合った彼女と別れを迎えたらしいってこと。風の噂だけどーとの前置きがあったので、それが確かかどうかは知らない。でもこのタイミングで飲みに誘われるってことは、ほんとだったのかな、と思った。
本屋でバイトをしている時に一度聞いたことがあった。同じ大学の同じ学部の女の子と付き合いだしたって。そのときの晃は珍しく真面目モードで照れていて、その彼女のことを話していた。