(短編集)ベッドサイドストーリー・2
急に色々考えて混乱した頭を静めるために、私はバーテンダーにグラスワインの追加をお願いする。ちょっと落ち着かなくちゃ。晃に恋心を抱いてもいいかどうかってことよね。でももしかしたら、本当は別れてなくてあまりにもうまくいってるから話題に出ないだけかもしれないし、もう他に彼女が出来ているかもしれない。
それを確かめずにはゴーサインは出せないじゃない――――――――
届いたワインを一口飲んで、私はまた晃の寝顔へと目をむける。
「あ」
彼の頬に、睫毛が。
一瞬の躊躇。だけど、彼の頬に落ちている睫毛を、私は人差し指をのばしてそっと取った。
その瞬間、カウンターに頭をのせたままで晃が目を開ける。
二人の目があった。
ゆっくりと絡むような視線に息が止まる。
瞬きも忘れて、私は彼を見詰める。そして晃は私を。中途半端に空中に浮いたままの私の指。店の音楽も聞こえなくなってしまった。
体勢を変えないままで、晃はちらと私の指をみて、それをそっと自分の手で包み込む。驚いたけれど私はされるがまま。自分の右手が、晃の大きな手に包まれているのを感じていた。
彼は私の手を包んだままで、ゆっくりと下へとおろしていく。カウンターの下へ隠すように下ろして、親指でゆっくりと撫でる。その瞬間、電気が走るみたいな衝撃が、体の中であった。
ハッと息をのむ。
これは―――――――――
押さえてたものを、解放してもいいってことかな。
私の声が頭の中で響く。