(短編集)ベッドサイドストーリー・2
でも雲行きが変わってきている・・・。彼女は、この綺麗な人は、男を捨てようとしているらしい。
疲れた顔。だけど、やっぱり魅力的なこの女の人。負けを認めるわけにはいかないってことなのかしら。だとしたら──────私たち、一緒なんだわ。
類は真っ直ぐに雅美を見て口を開いた。
「いいえ、折角ですけど。私の方がやめさせてもらいます。大体祐司君は嘘をついたってことになるんだし。付き合ってる人などいないと私にハッキリ言ったのですから」
それなのに。目に不快感を浮かべて類は言い捨てた。
「それなのに、こんな大人な素敵な人がいたなんて・・・。バカにしてる」
雅美はちょっと慌てて腰をあげる。
「あら、そんな、いいのよ。私が付き合いをやめるから。よく考えたら長く付き合いすぎてお互いに飽き飽きしてたのよきっと!」
「いえいえ、私はもういいです。悪い夢をみたと思って忘れます。二股かけられたのなんて初めて」
悔しそうに唇を噛んでそういってから、類はちょっと苦笑した。
「・・・さっきまでは取り合ってたのに、今では押し付け合いになってますね」
「・・・そうね」
何となしに、二人は見つめあった。そしてゆっくりと、顔をほころばせる。
ふふふ、と笑いが零れだすのはそれからすぐのことだった。
一人の男を巡って争ってみて、話してみると何とまさかのお互いが気に入ってしまったようだった。
「信じられないわ、私、ユージのどこが良かったのかしら」
「本当。そんな嘘つきにはみえなかったんだけどな~」
クスクスと笑いながら、二人は冷めてしまったコーヒーを飲む。雅美がここへきてから、そろそろ30分が立とうとしていた。