(短編集)ベッドサイドストーリー・2
男は一人で玄関の前に立った。
彼はここ数ヶ月、二人の女の間を行き来していて、自分がうまく嘘をつけていることや立ち回れていることに深く満足していたのだ。やれば出来るじゃないか、俺だって。そういう気分だった。友達にも話してはいない。自分がしていることが一般的には浮気と呼ばれる褒められたことでないと知っている。だけど、どうしてもやめられないのだった。
二人の女は共に美しく魅力的だった。
それは磁石のS極とN極のようで、完全に違う種類の女たちだったのだ。
一人はスパイシーで一人はスウィーティー。それを一度に味わうことが出来るなんて、自分は何て幸せなんだろうと男は思っていた。
勿論これをずっと続けるつもりはない。
いつかは、ちゃんと片方へと決めてもう片方とは別れるつもりだった。だけど一人とはすでに長く付き合っていて、そのためにある種の居心地の良さもある。新しい女とは付き合いたてで何をしても楽しい時期にいたから、二人のうちどちらにするかを決断するのはまだ先のことだと考えていた。
それまでは絶対にバレないようにしなければ、男はそう思って、全てのことを慎重に行っていた。
そして今日は新しい彼女の方とランチデートなのだ。
いつもふんわりと可愛らしい服に身をつつみ、とろけるような笑顔で迎えてくれる類を想像して、男は口元の緩みを抑えられない。明るい声と女の子らしい部屋、それから抱き心地のよい小柄な体も。
弾むような指先でインターフォンを押した。
パタパタと足音が近づいてくる。