Memorial School
「えっ、と……何もしません。けど、エイチさんってエムさんの………」

「あの人はさ、俺の兄みたいなもんなんだ。」



相変わらず言葉は遮られるけど意図は伝わっているようで、私の質問に答えてくれた。もう、優しさは戻って(最初優しかったかは疑問なのでこの表現が正しいか分からないが)きている。



「お兄さん……?」



みたいなもの、ということは本当の兄弟ではないのだろう。そもそも、この学校で兄弟姉妹がいる人になんて会ったことがない。まだ1年だから、単に私の顔が狭いだけなのかもだけど。



「だから一応言っておいた方が良いと思ってー。あ、怖がらせちゃってごめんね?戻ろっか。」

「あ、はい……」



もう私にとってこの人は、警戒するに値する人物へと成り下がっていた。最初、チャラいけど意外と優しそうな人だなあと少しばかり思っていたのが馬鹿みたいに思える。



怖がらせてごめんだなんて、きっと彼は微塵も思っていない。確実に私を牽制してきている。


私にはエムさんをどうこうする気は全くもって無いけど、念には念をということなのだろう。初対面でその人の本心までは分からないから。

私がエムさんに意図的に危害を加える可能性は、エイチさんにとって0じゃない。




息をするように嘘を吐ける人は、味方だと信用できないし敵だと危険だ。自分の全てを見透かされているような感覚にも嫌悪する。

全てを笑顔でごまかせる人は油断ならない。



結論、私はエイチさんが苦手だ。
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