龍神×紅蓮
そして、見つけたんだ。
実際に希を見たわけじゃない。
あいつを、長谷川光輝が出てくるのを見たんだ。
俺達はさっと身を隠し、すぐに清羅に連絡した。
『何だ、見つかったのか?』
電話に出て第一声がこれだ。
これでも進歩した方だ。
初めは電話に出ても何も話さず、一方的にこっちから話すだけだったからな。
「あぁ、希を見たわけじゃねぇが、あいつが出て来た」
『分かった、一旦戻ってこい』
わずか10秒足らずの会話。
要件だけを言い合って終わる。
いつもの事だが、早いよな。
「一旦帰るぞ」
何も言わず頷く2人を引き連れ、沢神組の本家へと戻った。
今回の事で頻繁に出入りしてる俺達はすんなり通してもらえる。
組長室には、親父さんと清羅、悠司、そして父さんが居た。
俺は思わず足を止めてしまった。
こうなる事は分かっていたのに、実際そうなってしまうと体が固まってしまう。
「蓮華、今は希の事が最優先だ。俺達の事は後回しだ、終わったら話をしよう」
そう言ったのは、父さんだった。
「あ、あぁ…」
父さんに、蓮華と名前を呼ばれ、こうやって普通に話しかけられて戸惑いは隠せられなかった。
どうしてこんなに普通に話せるのか…
不思議だった。