龍神×紅蓮


「黒戸華子さんですね、初めまして沢神竜と申します。こんな所まで来させてしまって申し訳ない、少し会わせたい人がいましてね」


父さんはおかえり、とあたしにそう言うと隣の華子さんに視線を移し、安心させるようふわっと微笑んでいた。


「いえ…」


「どうぞ、こちらへお掛け下さい」


目の前のソファへと促すと大人しく座る華子さん。


「突然ですが、あなたは旦那さんの事はどこまで知っているんですか?」


え…?


父さん、いきなりどうしてそんな事…?


華子さんも驚いてるし。


少し俯いてしまった華子さん。


「あの人が組の人間だったのは知っています。そこが危ない事をしてるという事も…」


っ…


翠さんが佐賀組に居た事、知ってたんだ…


蓮華だけが知らなかったんだ。


「そして、住み込みで任務があると言って出て行ったきり、あの人はこの世を去りました」


その任務っていうのが、沢神組に潜入するやつか。


華子さんの目から涙が流れていた。


「そうですか。すみません、辛い事を思い出させてしまって…」


持っていたハンカチで涙を拭いながら、首を横に振る華子さん。


「父さん、2人はまだなの?」


「そろそろだと思うんだがな…」


と言った瞬間…


コンコン

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