龍神×紅蓮


「ずっと謝りたかったの、ごめんね颯斗…」


そう言う冬子さんの目にはうっすらと涙が滲んでいる。


「部屋に篭った颯斗を見て、私達も辛かった。どうしたらいいかって…そしたら蓮華君が来てね、俺の大事な親友を失いたくないので俺が連れて帰りますって」


蓮華、冬子さんを脅したのかよ。


変わらないね。


「そしたら本当に連れて行っちゃって、颯斗が帰って来る事は無かった」


隣にいる颯斗はずっと俯いてて表情は分からない。


「しばらくして手紙が来たわ、楽しそうに笑う颯斗が写ってる写真が入った。その時思ったわ、この家にいたら颯斗を苦しめるだけ、新しい環境で笑えてるならそれでいいって」


冬子さんは寂しそうに微笑んでいた。


心が締め付けられる…


自分の息子が離れて行った。


そこで楽しそうに笑ってる。


あたしがその状況なら耐える事が出来るのだろうか。


でも、親だからこそ、子どもが幸せな環境にいる事を願う。


幸せなら離れても構わない。


親ってそういうものなんだ……

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