ある日、パパになりました。

ライブスタート!しかし事件が……

会場に入ると人の多さに圧倒された。(まぁ、外にいた時から想像出来てましたけどね)数秒間あっけに取られていると、ポケットに入れていたスマホがブルブルと震えた。画面には雪の自撮り画像と電話番号が表示されていた。(昔、無理やり設定されたんだっけな)少し懐かしく思いながら応答ボタンを押す。そこから聞こえてきたのは雪の焦った声だった。
「ゆっくん、今どこ?はぐれたみたいなの・・・」
俺はどうしたものかと思いながら、
「咲も一緒にいるんだろう?二人で楽しんでくれ、俺は一人で見るから」
まぁ、ここからでも見れるし、と思いながら自分のいる場所を確認して言う。俺がいるのはステージ正面の少し高い位置にある客席。さっきのやりとりに疲れ座って休んでいた。しかし、その休息は次の雪の言葉によってすぐに終わることとなった。
「ゆっくん、ごめんなさい。ドームに入場する時に咲ちゃんとはぐれちゃって今探してるけど、見つからないの!」
「はぁ!?」
つい大きな声を出してしまい、一斉に周りの視線を集めてしまう。
「それで、今どこにいるんだよ」
俺は席を立ち、歩き出した。まずは、雪と合流するために。

優羽と雪奈が自分のことを必死に探しているとも知らず、初めての来たライブということもあり、ワクワクしながら、グッズ売り場で「わぁ!」「これ欲しいなぁ」などと、目を輝かせながら見ている咲がいた。そんな一人でいる咲の後ろに二人の人影が近づいていた。

雪と合流した後、またすぐに別れて、俺は会場のあちこちを探し回っていた。しかし、見つからない。咲が行きそうな場所を地図を見ながら探し回る。見当たらない。俺はスマホを手に取り、雪に電話をかける。
「雪、そっちはどうだ?」
雪からの返事には力は無く、今にも泣き出しそうな声だった。
「大丈夫、まだ時間はあるから。それに、会場からは出ていないはずだから。後は・・・雪はライブが始まったらそっちに行ってくれ。今日は楽しみにしてたんだろう」
「ゆっくんは、どうするの?」
「俺は大丈夫さ、雪と違って、今日のライブはそんなに思い入れは無いから」
そう言って、俺は、電話を切り、また、咲を探すために走り出した。

優羽がグッズ売り場を探しに来る10分前。咲はグッズを夢中になって見ていた。だから、咲は気づかなかった。後ろから近づいてくる二人の人物に。そして、周囲のざわめきに。
「ねぇ、あの人って・・・・・・」
「きゃ〜!!、本物だ〜!!」
「えっ、なんでこんな所に!?」
咲はその二人のうちの一人に声をかけられて、初めて周囲に人が集まって来ていることに気づいた。
「ねぇねぇ、君。もしかして、優羽君の娘だったりするかな?」
えっ、私のことだけど・・・誰だろう。
「はい、そうですけど・・・・・・」
少し不安を持ちつつ、返事をした咲は、言葉を失った。そして、固まってしまった。何故なら、今目の前に立っているのは、ついさっきまで見ていたグッズに写っているルナキラの二人だった。
「ほらね、合ってたでしょ?キララさん。ふふふ、咲ちゃんって、可愛い〜」
そう言って、咲に近付き頭を撫でてくる。と同時に周りから、
「いいな〜」
「私にもして欲しい〜」
「何なのよ、あの子・・・・・・」
など、羨ましがる声や、咲についての声が聞こえてきた。そのことを聞いていたルナさんの後ろに立っていたロングの髪にスタイル抜群の美女、キララさんが、
「ルナ、ここは人が多いから止めときなさい」
「えぇ〜〜いいじゃん〜!!」
「ダメだって、咲ちゃんも困っているだろ?」
この時の咲はと言うと、状況を理解することに思考が追いつかず、フリーズして固まっていた。そんなことを全く知らない二人は、
「じゃあじゃあ、楽屋に来てもらおうよ!そうしたら、中には人来れないよ?」
「お、それはいい考えだな。それでは、咲ちゃん付いてきてくれ」
そう言って、ルナキラの二人は未だに固まっている咲の両手をとって楽屋へと向かった。
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