ある日、パパになりました。
優羽の平日―編集長からの呼び出し―
そんな、自宅で女子三人が楽しく昼食を食べているとは全く思っていない優羽は、編集部が入っているビルの近くのファミレスで昼食を取っていた。ただし、一人ではなく自分を入れて四人。まぁ、ファミレスに一人であまりいない気がする。ちなみに俺の隣には編集長の増田夢歌が、目の前にはアリスが、そして、その隣には同期の綾瀬颯斗が座っている。どうしてこのメンバーになったのかは、俺が編集部を訪れる頃に遡る。

午前9時55分。俺は編集部があるビルのロビーにいた。ついさっき、到着し、アリスに「着いた」と電話し、待っているところだ。そして、2分程経った時に、

ツンツン ツンツン

と後ろから背中を突かれた。俺は誰だろうと思いながら、顔だけを後ろに向けた。が、しかし、俺の目線の先には誰も映らなかった。ふと、その時、俺の脳裏に一つの昔の記憶が蘇った。


あれは、作家デビューしたての頃に、同じようにアリスをロビー待っていた時だった。俺は、後ろから腰の辺りを突っかれて、振り向いたが誰も視界に入らない。不思議に思いながらも顔を前に戻す。とすぐに、つんつんと突っつかれて、また振り向くが誰もいない。
「こっちだよ!」
下から女の子の声が聞こえた。俺は慌てて視線を下に下げた。そこにいたのは、中学生位の女の子だった。
「えっと・・・君は?俺に何か用かな?」
「あなた、ここの編集部のかんけーしゃさん?」
「んー、まぁ、そんな感じかな」
「じゃあ、連れていってくれませんかー?」
「うん、いいよ」
そうして、俺とその少女は三階の編集部へと向かった。あれ・・・エレベーターで上がったらすぐじゃね?編集部って・・・。とそんな疑問が生まれた俺だった。

「チン!」

エレベーターで三階に上がった。少女は、そのエレベーターの前にある編集部と書いてある扉を開けることなく、何故かそのまま、左奥へと歩いていた。
「ねぇ、君。さっきのとこが入口なんだけど・・・今、どこに向かっているの?」
「・・・・・・・・・」
少女は無言のまま歩いていく。仕方なく俺も後ろをついていくと、少女は急に止まった。目の前には一つの扉。そして、編集長室のプレート。へぇー、こんな所にあるんだ〜編集長室って。中はどんな感じなんだろう。すると、目の前に部屋の内装が入ってきた。へぇ、俺って透視能力があったんだ〜(棒)いやいや、まてまて!そんな能力ある訳ないじゃないか!いつから俺は厨二病になったんだ!まぁ、そんな時期もあったり・・・それはよくて!どうして、開いてもない扉から見え・・・あれ、扉開いてるやん!ふと、冷静になって前を見ると閉まっていた扉が開いていた。そして、よく見ると目の前に立っていた少女が中へ入っていた。
「ちょっ、君。ダメだって、勝手に入っちゃ――」
と中に追いかけて入ると後ろというか、部屋の左にある扉から、人が入ってきた。
「やっと帰ってきてたんですね。編集長」
声の先に目を向けると、アリスが立っていた。ん、今、編集長って言ったよな。どんな人だろう。そう思って、俺は後ろを向いた。目の前には大きな机と高そうな椅子。そして、その椅子に座るさっきの少女。
「え、なんで君がそこに座っているの?」
状況に頭の理解が追いつかない。
「ふぅ・・・」
一息置いて混乱している頭を冷静にする。すると少女の口から驚きの言葉が出た。
「emeral先生、今日は忙しい中、お呼び出ししてすまないのじゃ。ちなみに私がここの編集長をしている増田夢歌じゃ。今後、よろしくなのじゃ」
「・・・・・・・・・ええーーー!?」
俺は驚きを隠せずにそのまま声が出た。この子が編集長!?まじ!?受け入れないといけないんだよね・・・。今日一番の衝撃にゲッソリとしている俺をよそにアリスが、
「今日は顔合わせだけの予定だから帰っていいよ?emeral先生」
「あ、そうなの?じゃあ、失礼させていただきます」
俺は回れ右をして入ってきたドアへと向かい、部屋をあとにした。

「アリス、グッドじゃ!」
「では、約束通り今月の給料アップということで。では、私も」
そう言い残して、アリスも部屋を出た。
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