ある日、パパになりました。
「お母さーん?お父さーん?」
ううん、誰だろう。声が聞こえる。迷子なのだろうか、いや、それは違うな。ここは誰かの家の中だ。じゃあ、なぜ、この声の主は、親を呼んでいるのだろう・・・・・・。
「お母さーん、お腹空いたよー・・・・・・お父さーん、どこいったの・・・・・・」
少女は泣きながら自分の親をひたすら呼び続けている。部屋の隅にはパンの袋、カップ麺や惣菜の容器が入った袋が3.4個置いてあった。中央には、所々にカビらしきものが生えた布団が敷いてあった。少女の服は何度も同じのを着ていたのか所々敗れていたり、穴があいてあったり、シミがついていたりしている。スボンや服から出て見えている腕や足はやせ細っていた。髪の毛にはフケがそこらじゅうに付き、肌にもあかが溜まっている。この子の親は何をしているんだろう。

ピンポーン、ピンポーン、

いきなり家のチャイムが鳴った。そして、
「一条さーん、いないんですか?一条さーん?」
と男性の低いよく通る声が聞こえてくる。部屋で泣いていた少女は、チャイムがなったと同時に、部屋の隅で膝を抱えてガタガタと震えている。そして、呼びかけは「入りますよー?」を最後にして、鍵がガチャりと音を立てて、ドアが開けられた。そこには、2人の男性と1人の女性が立っていた。服装から見て、男性の2人は警察と大家さん、女性は保育士かなにかのように見えた。その男性2人は部屋に入ったと同時に部屋の異臭に顔をしかめ、鼻を腕で押さえ、女性は部屋を見渡して、少女を見つけると駆け寄って「もう大丈夫、大丈夫だから」と言葉をかけている。しかし、少女の目に光は無く、ただとこかを見つめているだけだった。その後、少女はその女性に連れられて、その部屋を出ていった。
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