ヲタカレ。〜デキる先輩の秘密〜
柏木さんはようやく姿勢を楽にして、しゅんとなった。
まるで、怒られた子犬のように。
「ご……ごめんなさい」
柏木さんは弱々しく謝る。
そんな柏木さんに向かって叫んでいた。
「そんなにヨウコがいいなら、ヨウコと結婚すれば?」
我ながら大人気ない。
そう思うけど、むしゃくしゃして止まなかった。
あたしの大声に、隣人が再び壁を叩く。
それが合図だった。
あたしは踵を返し、柏木さんの家を飛び出した。
最悪だ。
こんなに惨めで、こんなに悲しいの?
柏木さんが、アイドルに熱中していることが。
がむしゃらに走るあたしの頰を、涙が伝った。