ヲタカレ。〜デキる先輩の秘密〜
「うん、ちょっと映画観て泣いちゃって」
苦し紛れの言い訳をする。
そして、辺りをきょろきょろした。
良かった、柏木さんはいない。
柏木さんに、こんな顔見られたくないよ。
「どんな映画ですか?」
「えっと……『あなたのことが好きでした』。
DVDを借りて」
あたしは、少し前に流行った感動ものの映画の名前を言う。
すると高柳君も、
「あぁ、あれは泣けますよね」
なんて顔をくしゃっとして答えた。
そんな高柳君は、やっぱり裏表はないのだろう。
柏木さんみたいに、重大な隠し事をしている訳ではないのだろう。
高柳君が彼氏なら、こんな惨めな思い、しなかったんだろうな、なんて思ってしまった。