よく分かる桃太郎の攻略法

奇妙な君に、こんにちは

右も左も分からない森の中を、この男は迷うことなく進んでいく。

私をかついだまま。



…ドナドナ…

…売られていく子牛になった気分だ。



最初は暴れてみたけど、ガッチリホールドされてしまい、逃げられないことを悟ったのが先程のこと。

いきなりの行動にはめちゃくちゃ驚いたものの、彼は私を雑に扱うことはしなかった。

今だって、ほら。



草木を掻き分けながら、足場の安定しない森を歩いていると言うのに…

伝わってくる振動が少ない。

それが私の為かは分からないけど、落下の心配はなさそうだ。



「ねぇ、どこに向かってんの?」

「………………」

「私、食べられるの?」

「………………」



やっぱり言葉が伝わらないのか、返事はないまま森を行進する音だけが響いた。

夢だと信じたいのに、信じられる気持ちが少しずつすり減っていく。
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