ストレートな君




「悪りぃ。忘れ物取りに来ただけだから」



そう言って教室にズカズカと入って来たのは、野球部に所属しているクラスメイトの男子。




名前は確か夏見屋 壮(ナツミヤ ソウ)。





少し髪が伸びた坊主頭が特徴で、目がタレ目というなんとも優しい顔をしている。



なのにキリッとした表情をしている夏見屋くんはなんてカッコイイのだろうか。




あ、カッコイイって特別な感情があって言ってるわけじゃないから...‼︎



「...掃除」



「えっ?」



突然声を出した夏見屋くんに首を捻る。




〝掃除〟って聞こえたけど......菜央みたいにどんまいとか言われるのかな。







「掃除、頑張れ」



「あっ、うん。ありがとう」




手にグローブを持ってニカッと笑った夏見屋くんに、少し胸の奥がキュッとなった気がした。



「夏見屋くんも部活頑張れ」



きっと忘れ物というのは今夏見屋くんが手に持っているグローブだったんだと思う。



野球部にはグローブは必須だからないとダメだよね。


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