あなたの事が好きなんです。
「クリスマスだし、蓮に想い伝えちゃいなよ!」
高橋くんと長谷川くんとの待ち合わせ場所に向かいながら美和が私を説得し始める。
「先延ばしにしたらどんどん言いずらくなっちゃうよ!」
「うん……タイミングが合えば伝えようかな」
美和の迫力に圧倒され、つい曖昧な答えを返す。
「何言ってんの!タイミングなんて自分から作らなきゃいつまで経っても伝えられないよ!」
美和が言ってる事もよくわかる。
今までも何度か伝えようと思ったけど、学校だと長谷川くんが邪魔してくるので高橋くんと2人きりになる事はほぼ無かったし、私と長谷川くんをくっつけようとしてくる高橋くんを見るとどうしても言いずらくなる。
もしかしたら今日は2人きりになれるかもしれない。
その時はちゃんと気持ちを伝えようかな…
なんて考えてるうちに待ち合わせの場所へつく。
5分後に2人がやってきて、そのまま遊園地へ向かった。
「めっちゃ人いっぱい…」
入場ゲートに並ぶ行列を見て思わず足を止める私たち。
クリスマスということもあって、そこら中カップルだらけ。
「まずあれ乗ろうぜ!」
長い行列を並び抜いてやっと中へ入ると、子供のようにはしゃぐ高橋くん。
「あっちが先でしょ!!」
それに負けずはしゃぐ美和。
これはいつの日かのカラオケ状態になるのでは…
そう思いつつも2人について行き、次々とアトラクションに並んで乗って…の繰り返し。
混んでるのでひとつのアトラクションで早くても1時間も並んだ。
「ちょっと休憩!!」
しばらくして流石に疲れてきた私たちは、空いているベンチを探して休憩をすることにした。
「はい!」
美和と2人で売店に行って買ってきた飲み物を渡す。
「はい、これは長谷川くんの」
差し出した飲み物を受け取らず、ジッと私を見る長谷川くん。
「な…何…」
「その"長谷川くん"ってやめろよ」
「え…?」
「お?ハル、名前で呼んで欲しいのか〜?」
高橋くんが長谷川くんをわざとらしく指でつつく。
「…蓮もそうだろ。
いつまで"高橋くん"なんだよ」
からかう高橋くんがうざそうにする長谷川くん。
「確かに…俺は最近麗華ちゃんって呼んでるけど、俺のことは名前で呼んでくれねえな〜」
そう、高橋くんは一緒にいる事が増えてから
気付いたら私の事を"麗華ちゃん"と呼んでくれるようになった。
実は呼ばれる度に私はドキドキしているなんて誰にも言えず、密かに喜んでいた。
「でも、ずっとそう呼んでるから慣れちゃってるし」
恥ずかしいだけなのに、言い訳してしまった。
「えー!俺たちもう親友じゃん!!」
だから名前で呼んで!!
と言いたげな顔で見つめてくる高橋くん。
「わ…かった」
高橋くんに見つめられると断れない。
「よし、決まり~!」
"蓮"なんて恥ずかしくて言えない…
「ちょっと、何赤くなってんのよ~」
ニヤニヤしながら小声で冷やかしてくる美和。
「じゃ俺も"麗華ちゃん"じゃなくて呼び捨てにしちゃお~」
それを聞いた長谷川くん…いや、春樹は、不機嫌そうな表情を浮かべてる。
そして、再び私の顔をジッと見つめ…
「"ハル"」
「えっ?」
自分のあだ名を口にした。
「"ハル"って呼べ。」
そう言い放ち、トイレ と小声で言って「お手洗い」の看板方向へと歩いていく。
「…………」
「「あはははは!!!!」」
呆然とする私の横で、二人はお腹を抱えて笑いだした。
「恥ずかしいからって逃げんなよ~!」
「ねぇ、私もハ~ル♪って呼んでいい~?」
「勝手にしろ」
トイレから戻ってきた途端にからかう2人。
それを雑にあしらう"ハル"
「ハル………蓮………」
その後ろをついていきながら、ひそかに練習する私。