あなたの事が好きなんです。
「ちょっと、どこに行くの?」
「いいから付いて来い」
行き先を伝えられないまま連れて来られたのは
いつかのカラオケ。
あまり込まない穴場のカラオケなので、バレンタインでも満室では無いらしい。
なんでカラオケ…?
そう考えてるうちにハルは受付を済ませ、愛想の良い女性スタッフが部屋に案内してくれた。
「ごゆっくりどうぞ!」
笑顔で挨拶をするスタッフに小さくお礼を告げ、無言でマイクを見つめる私。
「歌えよ」
「…はい?」
連れて来ておいて、人に歌わせるつもり?
「今日はうるさい2人組もいねぇし
思いっきり歌えよ」
……もしかして、慰めてる?
「…じゃあ」
デンモクを手に取り、曲を入れるとイントロが流れ出す。
ハルの前で歌うのか…
前回は美和と蓮くんが2人で盛り上がったせいで1曲も歌わなかったし
ちょっと緊張するかも。
……なんて、思ってたのもつかの間
歌い始めた途端、止まらなくなった
まるで胸のモヤモヤを吐き出すかのように。